2016年2月27日
口唇のできもの、いわゆる腫瘤にはいくつか種類がありますが、最
も多いのが粘液のう胞(粘液瘤)です。これは、口腔粘膜に多数存
在する小唾液腺の唾液流出機能障害により、唾液が貯留したものと
考えられています。 下口唇に最も発症しやすいのですが、小唾液腺
が存在すれば、いずれの部位にも発症する可能性があります。
その病態から診断は容易です。 比較的若年層に好発し、中年期以降
においては少なくなります。
治療法は、潰すだけでは再発しますので、切除が必要になります。
その際、原因となっている小唾液腺を摘出します。正確な術式に
よれば再発はありませんが、手術による侵襲が原因となって、術
野に隣接した部位に新たに粘液のう胞が発症することで、見た目
上の再発が起こり得ます。これを防ぐため、手術時に、術野に隣
接して存在する小唾液腺は摘出します。
粘液のう胞に限らず、口の中にできる腫瘤の治療法は概ね似ていま
すが、悪性腫瘍(がん)を見逃さないよう注意が必要です。
症例を供覧いたします。
写真1 初診時
下口唇の腫瘤を主訴に来院されました。臨床診断は下口唇粘液のう
胞です。今回はレーザー(Er:YAGレーザー、ライトタッチレーザー®)
を使用して切除いたしました。
標準的な術式ではメスやハサミを使用して切除します。レーザーの
良いところは、出血が少ないこと、縫合が必要ないこと、そのため
抜糸の必要もないこと、術後の腫れや痛みが少ないこと、などが挙
げられます。
写真2 手術直後の状態
写真3 切除した病変と近隣に存在した小唾液腺
写真4 術後7日目の状態
写真4は術後7日目の状態です。縫合しなかったものの、ほとんど
上皮化しています。術後は痛みもなく、食事を摂るのに支障もなかっ
たそうです。
標準的な術式でも問題はありませんが、レーザーによる切除におい
ては患者様の負担をいくらか軽減できるものと思われます。
なお、Er:YAGレーザー、ライトタッチレーザー®の場合、炭酸ガス
レーザーと異なり、切除した組織が炭化することがありませんので、
必要があれば病理組織検査に提出することも可能です。悪性腫瘍を
見逃さないという観点からもメリットがありそうです。
Posted by 越谷市 歯医者 痛くない治療 口腔外科 ひろ歯科医院 無痛治療 at 14:07 / ブログ