2016年3月2日
写真1:30代男性。概ね健全と思われるレントゲン。
写真2:40代男性。歯周病が進行したレントゲン。
歯周病は歯周病原菌による感染症であり、菌の毒素により歯周組織
が失われることで、最終的には抜歯に至る病気です。直接の原因は
菌の感染およびプラークコントロール(歯磨き)の不良ということ
ですが、次のことも危険因子となります。
1.食習慣
2.ストレス
3.喫煙
4.不適合な歯のつめもの
5.歯ぎしり、くいしばり
6.全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)
7.薬の長期服用(免疫抑制など)
ほか
写真2の場合、歯周病が非常に進行していますが、齲食(むし歯)
は見られません。歯周病は自覚症状が少ないので、気づかないう
ちに重症化しやすい病気です。歯周病と齲食のなりやすさは別次
元のものであり、齲食がないために歯科を受診する機会がなかっ
たことも、歯周病が重症化した原因の一つかもしれません。
歯周病は単に歯だけの問題ではなく、全身に影響を及ぼすことが知
られています。歯周病との関連が指摘されている疾患に次のような
ものがあります。
1.高血圧症・狭心症・心筋梗塞・脳梗塞
いわゆる動脈硬化によるものです。
2.糖尿病
歯周病は糖尿病の合併症と考えられます。また歯周病治療により血
糖コントロールが改善するという逆の関係も良く知られています。
3.早産・低体重児
歯周病は早産の原因になります。エストロゲンという女性ホルモンが
歯周病原細菌の増殖を促すために、妊娠中は歯周病が悪化します。
4.骨粗鬆症
骨密度が低下するため歯周病も進行しやすくなります。骨粗鬆症の治
療薬のビスフォスフォネート製剤は、抜歯など骨への侵襲を加えた場
合、骨が治癒せずに壊死してしまう、重大な副作用が認められます
(薬物関連顎骨壊死)。そのため骨粗鬆症でビスフォスフォネート製
剤を使用している患者様は、抜歯を避けるために、予防に力を入れる
必要があります。
先に示した歯周病の危険因子は、その一部が糖尿病や高血圧症など
の危険因子と重複します。そのため歯周病が進んだ患者様は、なん
らかの全身疾患を合併している確率が高いと考えられます。歯周病
が進んだ患者様が、既往歴は特にないという申告をされても、われ
われ歯科医師は、糖尿病や高血圧症の可能性があると認識して治療
にあたります。
http://www.gcdental.co.jp/clinicalconv/pdf/no132.pdf より引用
メタボリック・ドミノとは、生活習慣病の負の連鎖を表すものです。
生活習慣病は軽度の問題から始まり、ドミノ倒しのように下流に進
み、最終的に重度の問題に至る、という考え方です。一度倒れたド
ミノを起こすことは困難です。
齲食や歯周病は、メタボリック・ドミノの上流に位置づけられてい
て、口の健康を保つことが全身の健康につながることをうまく説明
しています。
生活習慣病は可及的に上流で食い止める必要がありま す。
残存歯の多い人の方が、生涯医療費が少ないという報告があります。
歯を失う原因のほとんどが歯周病と齲食です。つまり歯周病と齲食の
予防はメタボリック・ドミノが倒れることを食い止め、ひいては生涯
医療費の削減につながるものと思われます。 これは患者様個人だけで
なく、社会的にも大切な考え方です。
Posted by 越谷市 歯医者 痛くない治療 口腔外科 ひろ歯科医院 無痛治療 at 09:04 / ブログ