2016年2月29日
多くの人に存在する親知らず。それ自体病変ではありませんが、親
知らずが原因で起こる問題がございます。
写真1 顎の中に埋まった親知らず
1.齲食(むし歯)
右下親知らずが横向きに生えています(写真2)。ほとんど骨の中 に
埋まっていますが、わずかに頭がのぞいています。この状態では 歯ブ
ラシで清掃することは不可能であり、齲食のリスク が高いといえます。
写真2 横向きに埋まった右下の親知らず
写真3は同じ症例の数年後の状態です。残念ながら隣接する歯に齲
食が発症してしまいました(黄色)。歯肉の高さがおおむね赤い線
の位置であり、歯肉よりもかなり深い位置に齲食が存在することが
わかります。この状況においては齲食の治療、それにつづくかぶせ
物の治療が非常に困難になります。 このような事態が予想される場
合には、親知らずを抜歯しておくメ リットが大きいと思われます。
写真3 親知らずが原因で発症した齲食(黄色)
2.腫れ、痛み、出血
清掃が不可能なため感染による腫れ、痛み、出血の原因になります。
疲労、睡眠不足、栄養不足など、免疫の低下した時にこのような症
状 が出やすいと思われます。女性の場合、周産期になると抜歯や投
薬が 難しくなりますので、その前に抜歯しておくとメリットがある
かもし れません。
3.口臭
上記と同じ理由で口臭の原因になり得ます。
4.腫瘍、のう胞など
埋伏した親知らずに関連して腫瘍、のう胞などの病変が発症する可
能性があります。良性のものがほとんどですが、除々に大きくなる
ので、早期に摘出する必要があります。
写真4 埋伏親知らずに関連したのう胞
5.歯並びへの影響
親知らずの影響で前歯の歯並びが乱れる可能性は一般的には低いと
思われますが、あり得ないことではありません。
6.骨折
事故やけがなどにより顎の骨に強い外力が加わった時、親知らずが
埋まっている部位で骨折が起こりやすい傾向にあります。
親知らずの抜歯は、通常の抜歯よりも難しいことが多いです。その
ために口腔外科へ紹介される患者様も多いと思われます。 ひと口に
親知らずの抜歯と言っても、その難度は症例によりかなり 異なります。
写真5(写真1の再掲)
下顎の骨の垂直部分(下顎枝)と、親知らずの手前の歯(写真の右
側が前歯側、つまり手前になります)のと間に、親知らずが通るた
めの十分な隙間があるか(写真における赤線の長さ)、が判断の指
標になります。十分な隙間があれば比較的容易で、なければ困難で
す。 写真5の場合はやや困難、となりますが、齲食(ピンク色丸)
があ るため抜歯せざるを得ません。
写真6
写真6の場合、下顎枝と親知らずの手前の歯との間に、ほとんど隙
間がないため、抜歯の難度は非常に高いと思われます。このような
場合においては、抜歯をせざるを得ない合理的な理由がないのなら、
経過観察のほうが良いと思われます。
Posted by 越谷市 歯医者 痛くない治療 口腔外科 ひろ歯科医院 無痛治療 at 14:06 / ブログ