2016年9月28日
歯の根が折れた(割れた)状態のことをいいます。これに感染を伴
うと、通常の治療で治癒させることは不可能です。歯の寿命という
べき状態で、治療法は抜歯です。
怪我など、強い力が加わった場合はもちろんですが、疲労骨折や金
属疲労と同じように、かみ合わせの力が持続的に加わることで、歯
の根が折れてしまうことがあるのです。
歯根破折は見えない部位で起こることが珍しくなく、その場合は破
折に気づかない、あるいは確かめられない、ということになります。
レントゲンでも破折を証明できないことが多いのです。何回治療し
ても良くならず、あきらめて抜歯したところ破折していた、といっ
たことはしばしば経験します。
歯科医師としましては、破折を疑うものの、それを証明できない場
合は安易に抜歯をするわけにはいきませんので、治療を続けますが
治りません。患者さんにとっては何回も通院したのに治らす、結局
抜歯されたという不満が募ります。非常に厄介な病態です。
抜歯の適応である歯根破折ですが、条件がよければ保存に成功する
こともあります。
実際の症例をご覧いただきます。
写真1 症例1、レントゲン所見
歯肉の腫れのため来院されました。
レントゲン(写真1)では歯根先端付近に影があり、これは炎症の
存在を意味します。34年前に当院で根の治療をさせていただい
たのですが、治療は良好になされているように見えます。レントゲ
ン上は明らかな破折は指摘できません。
一応、根の治療をやり直してみましたが腫れがひきません。
手術用顕微鏡で観察したところ歯根破折が確認できました。
歯根破折の診断がつき、抜歯が普通であるこの状況において、歯を
残すために試みる手段の一つに意図的抜歯再植手術というものがあ
ります。これはわざと抜歯して、口の外で折れた歯を修復して、元
に戻す、といった治療法です。
写真2 破折線(赤矢印)
抜歯した歯を示します。見えにくいですが、破折線を認めます。
写真3 破折線にそって削られた溝(赤矢印)
破折線にそって、特殊な器械を使用して細い溝を形成します。
写真4 接着剤で補強
溝の中に接着剤を過不足なく充填します。ある程度硬化したら抜歯
した部位に戻します(再植)。
術後は当分の間、再植した歯でかまないようにしていただきます。
4~6週程でかめるようになります。
写真5 症例2、口腔内所見
別の患者さんです。右上奥歯が折れてしまいました(写真赤矢印)。
写真6 抜歯した歯
抜歯して、レーザーで感染源を除去しました。
写真7 接着後(赤矢印)
接着剤で修復して、硬化後に元に戻しました。
歯根破折の治療における成功の条件を列挙します。あくまで私見で
す。
細かい破片があると成功しません。また、折れ方が複雑で、全ての
破折線を処理できなかった場合は失敗に終わります。
かみ合う歯の数が少ないと、1本の歯が負担するかみ合わせの力が
強くなり、術後の安静を図れないため失敗する可能性が高まります。
清掃状態が悪いと感染する確率が高くなります。
はじめから動揺していた歯は、抜歯をすることでより動揺が強くなる
ので、成功しないと思われます(動揺している歯は破折しにくいので
すが)。
術後の安静を図ることができないため成功しません。
喫煙される患者さんは失敗に終わる可能性が高まります。
もし歯根破折でお困りの患者さん、または先生がいらっしゃればぜひご
相談ください。お役に立てるかもしれません。
Posted by 越谷市 歯医者 痛くない治療 口腔外科 ひろ歯科医院 無痛治療 at 11:44 / ブログ